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ついに始まった有機認証制度
青山浩子
独自基準で認証する外食
そんななか、外食業者は「安全」と「低価格」という、消費者ニーズを満たすため、認証制度とは別の独自基準を打ち出した。外食の業界団体、日本フードサービス協会(JF協会)が九八年、野菜とコメの自主事業をつくった。それが「JF基準」といわれるもの、有機ではなく、特栽(農薬、化学肥料を慣行栽培の五〇%減)を原則としている。 また昨年春、JF基準をパスした農産物に、認証を与える制度をスタートさせた。すでにファミリーレストラン「ジョナサン」や居酒屋チェーン「和民」などでは、JF認証の野菜を使っている。 外食といえば、スーパーより早くから有機野菜を使ってきた。その外食が、なぜ独自に「特栽」の認証を作ったのか? JF協会の千葉国雄広報室長はこう話す。「有機がベストだが生産量が限られる。外食はメニューも決まっており量の確保が重要。JF基準は独自の基準だが、第三者機関が認証するので、消費者の信頼は得られるはず」。認証コストは生産者出荷額の〇.五%程度におさえ、これを外食、卸、生産者の三者で分担し、メニュー価格には反映させないつもりだという。 一方、同じ外食でも、JAS認証をうけた野菜を積極的に取り扱うところもある。首都圏を中心に「北海道」、「濱町」など居酒屋を展開する平成フードサーヴィスだ。同社は、各地の有機農家と年間契約しており、店舗で使う野菜の八割が有機栽培だという。 同社武内智副社長は「本物の有機とは何かを消費者に知らせるためにも認証は必要」と、契約農家に認証取得を呼びかけている。ただ他社同様、メニューの値上げは考えておらず、「認証コストは生産者負担になるが、物流費など別のコストを削減することで、コスト増は避けられると思う」と話す。低迷続きの外食だけに、安全が証明されている野菜を、従来どおりの価格で提供することで、消費者の需要を掘り起こしたいという狙いがあるのだろう。
先行投資としての認証取得
二〇〇一年三月一日現在、JASの認定を受けた件数は三五二件。そのうち国内の生産者がトップで二二五件、加工品などの製造業者が七一件とつづく。認証制度が始まる前から認証業務に携わってきた検査員によると「思った以上に生産者からの申請が多い」という。 認証制度に消極的な流通業者や、独自基準を作った外食業者の動きを見る限り、生産者が認証を取るだけのメリットは、残念ながらなさそうだ。だが、あえて積極的に認証を受ける生産者もあれば、認証に頼らず、消費者との信頼関係を大事にする生産者もあり、対応ぶりはさまざまだ。 JAとして有機栽培に取り組んできた千葉県のJA山武郡睦岡支所有機部会。昨年秋、約五〇名の部会メンバーが認証検査を受けた。部会は生協、外食、宅配業者など幅広い販路を持っている。認証は取引先の依頼ではなく部会で決定。コストは部会費で賄うという。 「認証制度には多くの問題があるが、背を向けても仕方ない」というのが、下山久信支所長の考えだ。「認証自体が重要だとは思わないが、情報公開は今後必要になる。取引先から情報を求められたとき、即対応できる態勢を作りたい」。 認証を受けるには、栽培方法やほ場に関するさまざまな書類が求められる。認証をきっかけに情報を蓄積し、必要に応じて公開すれば、取引先の信頼も高まる。 同部会のように認証を取らなくとも、自主的な基準にもとづいて栽培し、情報公開にも対応しようとしている産地は、このところ増えつつある。
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