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ついに始まった有機認証制度
青山浩子
有機より特栽に重点を置く小売
「認証を受けた有機農産物は、一部取り扱うつもり。でも量は青果物全体の一%にも満たない」イトーヨーカ堂の青果部、戸井和久シニア・マーチャンダイザーはいう。 同社では、消費者の健康志向に対応し、九六年から有機野菜と特別栽培野菜を、それぞれ「有機野菜」「健康野菜」というブランドで売ってきた。だが、有機野菜を買いに来るのは、家族がアトピーだったり、有機にこだわりをもつごく一部のお客さんだという。したがって、有機野菜を取り扱っているのは、首都圏の一部店舗だけで、これがそのまま認証品に切り替わるだけという。 産地の事情に詳しい戸井氏は「認証制度が日本の風土に合ったものではないのは確か。費用だって農家には負担が大きい」という。だからといって、有機農産物は、回転率や利益率が高くないため、小売として認証コストを一部負担することは難しいのだという。 むしろ同社は、「有機野菜」よりも「健康野菜」に力を入れている。価格も、「有機」は一般の野菜より三〜五割り増しだが、「健康」は高くても二割増しに抑えているという。 大手スーパーには、有機はあくまでも品揃えのための商品なのだ。認証制度で、本物の有機が出回るからといって、これまでより積極的に有機を取り扱おうというスーパーは見られない。認証制度が始まる前から有機野菜を取り扱ってきたジャスコも「従来の有機野菜を認証品に変えるのみ」と現状維持の構え。ダイエーとなると「これまでも有機は扱ってこなかったし、今後も扱うつもりはない」ときっぱりいう。 ※特栽:減農薬、または減化学肥料によってつくられた農産物のこと
冷ややかな市場関係者
小売店舗のこうした動きと同じく、卸業者も有機に対して概して冷ややかなところが多い。東京・太田市場で取扱高トップの日本最大の卸売企業、東京青果は九一年に有機や特栽、地域の特産品を扱う「個性化演芸農産物コーナー」を設置。認証制度をきっかけに有機の取り扱いを拡大するのかと思いきや、そうではなさそうだ。 「スーパーもデパートも売場から有機は減っている。健康とか安全とかいわれているが、消費者はやはり価格優先。有機はいわれるほど売れていない」と関係者の声。こうなると、認証品を積極的に扱うことは考えにくい。 長引く不景気で、消費者の財布の紐が硬くなっているいま、「安全なものは欲しいが、いくら高くてもかまわない」という人も少ない。 おなじ市場関係者でも、外食業者等と取引する仲卸業者の中には、流通業者としての有機認証をとっているところもある。「JASマークは評価されると思う。だが価格が高くなってしまえば売れない。慣行のものに比べ耐えられる価格に抑えられるかが問題」と仲卸の関係者はいう。有機は栽培そのものに手がかかる上に、認証コストが加わって割高になってしまう。流通業者が認証品を前に足踏みするのはコスト問題が大きい。
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